2022年11月10日
大尾(たいびと読み、結末という意味です)
無限に続くかと思われる苦悩の時間でした。
頼みの学生は一人また一人と討ち取られていき、私たちはまさに風前の灯火
という状況に追い込まれました。
しかし、私たちの選択は間違いではありませんでした。
「スパイ大作戦」を思わせる私たちの「棚からぼた餅」作戦が功を奏し、
まるで映画で時限爆弾が三秒前に止まるように、あと三人のところで
授業時間が終わったのです。
単なる偶然なのか、神の啓示なのか定かではありませんが、私たちは思わぬ
ところから降りかかった未曾有の災難を逃れることができました。
私はこの経験から、大きな教訓を得ました。
それは、教室では後ろの席が安全であるというようなことではなく、私たちの
生き方そのものにじかに関わってくるものです。
フランス文学を専攻する以上、フランス語を身につけ、謙虚にフランス文学に
向き合わなければならないのです。
学問であれ、職業であれ、何かを専門とするからには、そのために必要なものは
怠ることなく用意しなければなりません。
それが人間としての誠意であると認識させられたのです。
つらい時間を耐えたことは、私にはむしろ幸いだったと思っています。
以後、私は人並みにフランス語の習得に励み、平凡な成績でしたが、仲間と共に
フランス文学科を卒業しました。
卒業後も、フランス文学を志した学徒の一人として自分なりの研究を続け、今も
時間の許す限りフランス文学に親しんでいます。
どのような立場であれ、どのような職業に就くのであれ、私たちは自分の
専門分野に責任を持たなければならないと思います。
専門分野で優れた業績を残さなければならない、ということではありません。
自分の能力に合わせて分相応に努力すればよいと思います。
その結果が評価されるかどうかは、また別な話です。
自分なりに努力したという自負が、何よりも貴重なものなのです。
専門分野においては怠け者であってはならない、というのが私の得た教訓です。
類のない怠け者と自他ともに認めてきた私が、比較的早い時期に覚醒するきっかけ
となる一撃を受けたことは、たいへん幸運なことだったと考えています。