2022年11月14日
今回は説話文学の代表である『今昔物語』から出題してみました。多くの教科書にも収録されていますので、読みやすいと思います。古文解釈の基礎の確認として利用してみてください。解答解説は次回。
今は昔、いつのころほひの事にかありけむ。清水に参りたりける女の、幼き子を抱きて※御堂の前の谷をのぞき立ちけるが、いかにしけるやあり(a)けむ、児を取り落として谷に落とし入れてけり。はるかにふり落とさるるを見て、すべきようもなくて、御堂の方に向かひて、手を摺りて、観音助けたまへとなむまどひける。今はなきものと思ひけれども、ありさまも見むと思ひて、まどひ下りて見ければ、(1)観音のいとほしとおぼしけるにこそは、つゆ疵もなくて、谷の底の木の葉の多く落ち積もれる上に落ちかかりてなむ臥したりける。母喜びながら抱き取りて、(2)いよいよ観音を泣く泣く礼拝したてまつりけり。
これを見る人、みなあさましがりてののしりけりと(b)なむ。
※御堂:仏像を安置した堂。
問1 下線部(a)、(b)のそれぞれについて、下記の例を参照して文法的に説明せよ。
例:けれ 過去の助動詞「けり」の已然形。
問2 下線部(1)について、どういうことか。前後の文脈を踏まえて説明せよ。
問3 下線部(2)を現代語訳せよ。
問4 観音とはどのような存在か。本文の内容を踏まえて30字以内で説明せよ。